遺言書作成の流れ
ここでは遺言書作成の流れについて解説していきます。
「遺言書Q&A」ページで少し触れましたが遺言書は3種類あります。
ちなみに「遺言」は「ゆいごん」と読まれますが、相続などの場面では「いごん」と呼ばれます。
3種類の遺言書にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
もちろんこれはそれぞれを比較しただけで、遺言書として効力を発揮していればどれを選んでいただいても問題ありません。「効力を発揮していれば」です。
そして、遺言書には厳格なルールが有ります。
ここでは厳格なルールを押さえつつ、それぞれの遺言書の作成方法を解説していきます。
自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)
自筆証書遺言とは遺言書を@全て自筆し、A日付、B署名、C押印したものです。
遺言書の中では最も簡易なもので紙とペンと印鑑が有れば完成します。
@全て自筆
「全て自筆」に関しては法改正によりルールが緩和されました。後程まとめて解説いたします。
A日付
「日付」は文字通り遺言書を書いた日付を書きます。遺言書は何度でも書き直すことが出来るので、日付の違う遺言書が見つかった場合は日付が新しいほうが有効となります。また七月吉日などの「吉日」では無効となります。「○○年○○月○○日」としっかり書き入れましょう。
B署名
「署名」ももちろん自筆です。
C押印
「押印」は拇印でも三文判でも構いませんが実印を押しておきましょう。
これで完成です。
これは規定されてはいませんが、封筒に入れ封印をしましょう。偽造などを防止するためです。そして大切に保管しましょう。
自筆証書遺言は上記のように簡単に作成できます。強いて言えばすべて自筆であることでしょうか。
自筆証書遺言でのトラブルは圧倒的にその内容にあります
(詳しくは「遺言書のトラブル」ページをご覧ください)。
内容さえ間違えなければ手軽に書くことが出来ます。
法改正により自筆証書遺言のルールに変更が有りました
自筆ルールの緩和
先程@「すべて自筆」と述べましたが、このルールが緩和されました。
遺言書には相続財産の分割方法を書くことになりますが、これに財産目録を添えることが主流となっています。もちろん遺言書の内容は自由に書くことが出来るのですが、後のトラブルを回避するためにあらゆる事態を想定して書くことが望ましいのです。
そのため書き入れる内容が多くなり書き手の負担となっていました。今回の改正で財産目録は「自筆でなくてもよい」ということになりました。パソコンで作成してプリントアウトしたものや、預金通帳のコピーなどでも良いということです。
あまりピンときませんが財産目録までを自筆で書いてみると大変なことがわかります。今回の法改正によりこの労力が削減されることになります。
法務局でも保管できるように
また保管場所についてですが、今まではは自己保管だったため紛失や見つけてもらえない、見つけてもらっても隠されてしまうなどのトラブルが絶えませんでした。
そのため今回の法改正で法務局で保管してもらえるようになりました。これで紛失や偽造の心配がなくなりました。
自筆証書遺言は家庭裁判所での「検認」が必要です
相続発生後は自筆証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要になります。遺言書の存在と形式を確認してもらうことです(内容の不備を補うものではありません)。
ただし法務局で保管してもらった場合は検認手続きは不要です。
公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)
公正証書遺言とは公証役場で作成される遺言書のことです。
公証役場とは公正証書を作成する場所です。公証役場には公証人(法律の専門家)という方がみえます。その公証人が作成してくれるのが公正証書です。ですから公にその存在や内容を認めてもらうことになります。
順を追って説明します。
1 遺言書の原案を作成します
まずは遺言書の原案を作成することになります。内容は基本的には自由に書くことが出来ます。公正証書は公証人が作成することになるのでメモ書きでも構いません。
2 必要な書類を収集します
相続財産の登記簿謄本や相続人との関係がわかる戸籍謄本などの資料を用意します(遺言書の有効性を持たせるための裏付け資料となります)。
3 事前打ち合わせ
遺言書の原案や資料を参考にして公証人と事前打ち合わせを行います。相続分が偏った内容だったりした場合は公証人からアドバイスを頂くこともあります。打ち合わせ内容をもとに公証人が公正証書遺言の内容を作成していきます。
4 公正証書遺言の作成
公正証書遺言は公証役場へ出向いて作成してます(例外も有りますが)。
この時2人の証人が必要となります。証人は推定相続人(相続人になるであろう人)など一定の人はなることが出来ません。司法書士さんやその紹介者になってもらうことが多いようです。
遺言書は公証人が作成した内容を読み上げ、本人と証人2人が同意し、それぞれが署名・押印することで完成します。
この時公証役場に手数料を支払います。手数料は相続財産の価額や分割方法によりますが、だいたい10万円前後です。
遺言書の原本は公証役場で保管され正本と謄本が渡されます。
これで公正証書遺言の完成です。
相続時には家庭裁判所での検認は不要です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは遺言書の内容を秘密にしてなおかつその存在を公証役場で認めてもらうことです。
どうしても秘密にしておきたい、かつどうしても発見してもらいたい場合にのみ有効な遺言書です。
順を追って説明します。
1 遺言書を作成します
遺言書は当然有効となるような内容でなければなりません。内容は自筆でなくても構いませんが、署名と押印は必要です。それを封筒に入れ封印をします。この時遺言書に押印した印鑑で封印する必要があります。
2 公証役場へ持参する
証人2人と共に公証役場へ行きます。証人が推定相続人などの一定の人がなれないのは公正証書遺言の時と同じです。それぞれが封紙に署名、押印などをしたら秘密証書遺言の完成です。この時手数料(11,000円)が掛かります。
遺言書は遺言者自身が保管することになります。公証役場には遺言書を作成したという記録だけが残ります。
相続時には家庭裁判所での検認が必要です。
以上がそれぞれの遺言書作成の流れです。
手軽さで言えば自筆証書遺言、確実さで言えば公正証書遺言です。秘密証書遺言は検討しなくても良いでしょう。不確実で手続きが面倒です。