遺言書のトラブル
ここでは遺言書によるトラブルをご紹介します。
遺言書のトラブルと聞くとまず「遺言書の形式に不備がある」「遺言書の内容があいまい」など遺言書の書き手側のトラブルを思いつくと思います。
ですが、遺言書によるトラブルは書き手側(被相続人)のトラブルだけでなく相続人によるトラブルもあるのです。
では、それぞれどのようなトラブルがあるのか見ていきましょう。
遺言書の形式に不備がある
遺言書の形式に不備がある場合は遺言書が無効となります。
せっかく書いた遺言書自体が無効となってしまうのは残念ですよね。
形式による不備は自筆証書遺言によるものです。公正証書遺言ではまずありません。自筆でない、日付が無い、署名が無い、押印が無いなどです。
「遺言書作成の流れ」ページを参考に有効な遺言書を作成しましょう。
遺言書の内容があいまいである
遺言書の内容は自由に書くことが出来ますが、その内容はハッキリと書かなければなりません。
特に相続財産の指定についてはあいまいではいけません。
ではハッキリ書くとは具体的にはどう書くのでしょうか。まずは具体例を見てください。
例1 自宅を長男に相続する
自宅とは被相続人の居所だった建物だと思われます。少し嫌な言い回しをしましたが、遺言書では「あいまい」だと取られてしまいます。
不動産を複数お持ちの場合は特にですが、住民票の住所ではなく登記簿謄本の記載事項を書き入れましょう。
さらに土地も一緒に相続させるの?土地に関しては「自宅」だけでは含まれるのか含まれないのか伝わりません。
不動産に関しては必ず登記簿謄本を取り寄せましょう。
例2 ○○銀行の預金を長女に相続する
これもあいまいな表現と取られてしまいます。普通預金のみ?定期預金も?などです。
必ず○○銀行○○支店○○預金、口座番号○○○○まで書き入れましょう。
相続財産は誰に何をどのくらい相続させるのかはっきりと書くようにしましょう。
遺言書が見つからない
遺言書の保管方法によるトラブルです。
せっかく書いた遺言書が発見されないのは残念なことです。遺言書を書いたことを誰も知らなければ探すことすらしてもらえないかもしれません。
またあまりにも手軽な場所で保管していると偽造や紛失のおそれがあります。
専門家のサポートを受けて遺言書を作成した場合、その専門家が保管してくれることもあります。
法改正により法務局でも預かってもらえるようになります。
遺言書を誰かに書かされたと疑われる
相続人の中で遺言書の内容に不満を持つ人が、遺言書は誰かに書かされたんじゃないかと疑いを持つことがあります。
遺言書の内容が相続財産の分割方法のみだと書き手の真意が伝わらないこともあります。付言事項として「なぜそうしたのか」などの「思い」を書き入れると良いかもしれません。
遺言書を偽造・破棄する
遺言書を見つけた場合は開けてはいけません。
場合によっては罰金などの処罰を受けることもあります。たとえ家族などの相続人が揃っていてもダメです。
もちろん書き直したり、捨てたりしてもいけません。相続人になれなくなってしまいます。
よく専門家が公正証書遺言を勧めますが、こういった事情もあるからなのです。
遺言書を見つけた場合は家庭裁判所で検認手続きを行ってもらわなければなりません。
間違って開けてしまった場合もその旨を家庭裁判所に伝えましょう。
遺言書が古くて財産を受けとる人が故人となっている
相続分を指定されている相続人が先に亡くなっている場合はその部分に関しては無効となります。代襲相続もありません。
「予備的遺言」や「補充的遺言」と言いますが、あらゆることを想定して書いておくことで回避出来ます。
遺言書が複数出てきた
遺言書は重複する部分については新しいものが優先されます。
遺言書に日付を書き入れる理由はここにあります。
遺言書が複数枚出てくると、まだあるんじゃないかと探す羽目になります。遺言書を書き直したら古い遺言書は処分しましょう。
遺言書の字が読めない
達筆すぎるのは問題ありません。専門家に解読してもらえばいいからです。字が乱雑すぎて読めないと無効となります。
また注意が必要なのは、加筆・訂正する場合です。加筆・訂正する場合にもルールがあるのですが、偽造を疑われることにもなりかねません。そういった場合は書き直すことをお勧めします。