後見人制度利用の流れ

ここでは後見制度を実際に利用するまでの手続きと、制度利用終了までの流れを解説していきます。
後見制度って何?という方は「後見人Q&A]をご覧ください。
後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」があります(ここでは未成年後見制度については解説致しておりません)。
それぞれ手続きが違ってきますので別々に解説していきます。
(ここでは、実際に後見人の申立てをご自身で行う場合のみお読み頂ければ結構です。それ以外の方は「簡易版」をご用意いたしましたのでそちらをご覧ください。)

法定後見制度利用の流れ

後見制度を利用するためには家庭裁判所の審判(判決みたいなものです)が必要です。
この審判を受けるためには様々な書類を用意して申し立てる必要があります。それでは申立てに必要な書類の収集、作成から制度の利用、終了までを順を追って解説していきます。

1 後見制度利用の決定

後見制度の利用は差し迫った事情を抱えている方がほとんどです。
ですが、後見制度利用までの手続きは膨大で制度利用開始までは数か月は掛かってしまいます。後見制度利用のメリット、デメリットよく検討して早めに決断しましょう。
また、一旦申立てを行うと勝手には取り下げられません。慎重さも求められます。

申立てを出来る人には一定の範囲があります。本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、市区町村長、検察官です。誰もが申し立てれるわけではありません。

2 家庭裁判所への申立て書類等の準備

後見制度利用を決めたら、次は家庭裁判所への申立て書類等の準備をします。非常に多くなりますがあきらめずに頑張りましょう。
(申立てる裁判所によって提出する書類が異なる場合があります。ここでは名古屋家庭裁判所を例にして解説していきます。)

申立書類(家庭裁判所から取り寄せます)
診断書、診断書付票、鑑定連絡票

家庭裁判所指定の診断書様式で作成してもらいます。「お願い(主治医の先生へ)」と併せて、診断書等の作成を主治医に依頼します。

申立書
本人に関する照会書

財産目録(本人が相続を予定している場合は遺産目録も)、本人予算収支表、親族関係図

候補者に関する照会書
添付書類(戸籍謄本類)(いずれも3か月以内のもの)
本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
本人の住民票(世帯)または戸籍の附票
本人の登記されていない事の証明書

最寄りの法務局の本局で申請するか、東京法務局に郵送で取り寄せます。
証明事項の「成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がない」にチェックを入れます。
申請には、申立人の戸籍謄本等、本人と申請者との親族関係が分かる戸籍謄本が必要です。

候補者の住民票(世帯)または戸籍の附票
申立人の戸籍謄本等

本人と申立人との親族関係が分かるものです(本人の戸籍謄本等により分かる場合は不要)。

添付書類(本人の財産についての資料)
不動産

不動産登記事項証明書(法務局)、未登記の場合は固定資産税評価証明書(市町村役場税務署)を用意します。売却を予定している場合は両方必要です。(固定資産税評価証明書については、物件及び不動産評価額の記載のある固定資産税納税通知書のコピーでも可)

預貯金

預貯金の通帳・証書のコピー(過去1年分のコピー)

有価証券

有価証券等のコピーまたは証券会社発行の取引残高明細書のコピー(表裏全部)

保険

各種保険契約の保険証券のコピー(表裏全部)

負債

本人が債務者、連帯債務者、保証人、連帯保証人となっている負債について、その具体的な内容を示す資料のコピー(金銭消費貸借契約書、住宅ローン契約書、保証書、返済計画一覧表などのコピー)

添付書類(本人の収支についての資料)
収入

本人の収入を示す資料のコピー(年金・手当額通知書、確定申告書、給与明細書、配当金支払明細書等のコピー)

支出

本人に関する支出を示す資料のコピー(医療費や施設費の領収書(直近1か月分)、税金・社会保険の通知書(納付指示書)、請求書等のコピー)

費用
収入印紙

800円(申立書)、2600円(登記嘱託費用)

郵便切手

310円×3枚、82円×10枚、10円×10枚、5円×2枚、2円×10枚、1130円×1組

現金

5万円程度(精神鑑定を行う場合のみ)

3 家庭裁判所への申立て

提出書類がすべて揃ったら家庭裁判所に提出します(提出する家庭裁判所は本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います)。

4 家庭裁判所での審理・審判

審理
申立書類の審査
申立人等の面接・調査

申立人、本人、後見人候補者が家庭裁判所に出向きそれぞれの事情説明を求められます。
本人が出向くことが出来ない場合は、家庭裁判所調査官が直接本人のもとに出向いて面接をします。
「鑑定」が必要であればこの段階で行われます。

審判

家庭裁判所が後見開始の判断をします。

審判所の発送

家庭裁判所から「審判書」が、本人、申立人、後見人等に発送されます。

審判の確定

2週間の抗告期間経過後に審判が確定します。

後見登記

家庭裁判所から法務局に後見登記が行われます。
法務局で登録完了後、後見人には「登記番号通知書」が送られてきます。

5 支援業務の開始

法務局で「後見登記事項証明書」を発行してもらいます。この手続きには上記の「登記番号通知書」が必要です。
この後見登記事項証明書は銀行や郵便局等で後見人の登録をしてもらうために必要となります。

6 家庭裁判所への初回報告

家庭裁判所への初回報告の期限は審判の日から2か月(審判確定から約1か月半)です。

関係機関で後見人の登録を行ってもらう

関係機関への届出や登録が必要となります。関係機関とは以下のようになります。

1 市区町村の役場・税金関係
2 金融機関
3 不動産関係
4 年金事務所
財産調査をし財産目録を作成する

財産調査・財産目録の作成は後見制度利用の申立て時に作成した方法です(添付書類(本人の財産についての資料)参照)。
申立て時は申立人が作成しましたが今回は後見人が作成します。
家庭裁判所で用紙を取り寄せ必要事項を書き入れます。

年間収支予定表を作成する

こちらも財産目録作成と同様に用紙を取り寄せ必要事項を書き入れます。
以上の書類が揃ったら家庭裁判所で初回報告を行います。

7 家庭裁判所への定期報告

後見人には1年に1度、報告書を提出する義務があります(定期報告と言います)。
定期報告書は家庭裁判所から取り寄せます。必要事項を記入し添付書類を添えて提出することで報告します。
提出書類は、
@後見事務報告書
A財産目録
B本人収支予定表です。
なお、被後見人の住所を変更する場合や、居住用の不動産を処分する場合などは家庭裁判所への申立てが別途必要となります。

8 支援業務の終了

本人の死亡により後見業務は終了します。ここでも手続きが必要になります。

@家庭裁判所への報告(電話でも構いません)
A「後見終了登記申請」

申請は東京法務局になります(窓口へ持参または郵送)。

B管理財産の計算

2か月以内に管理財産を計算し財産目録を作成します。

C管理財産の引継ぎ

管理財産を家族・親族に引き継ぎます。「引継書」を家庭裁判所に提出します。
用紙は家庭裁判所にから取り寄せます。

D家庭裁判所に「後見事務終了報告書」を提出

家庭裁判所から取り寄せた後見事務終了報告書に必要事項を書き入れ提出します。添付資料として「死亡診断書」または「除籍謄本」、「財産目録」、「預金通帳」などのコピーと共に提出します。

9 死後事務

後見人は「遺体の引き取り」「火葬の手続き」「医療費や公共料金の支払い」などの死後事務も行えます。
これらは後見人が家族でなくても行えます。

 

以上で「法定後見制度」に関する解説は終了です。続いて「任意後見制度」について解説します。

任意後見制度利用の流れ

任意後見制度を利用するためには事前に「任意後見契約」を結ぶ必要があるため、本人の判断能力が求められます。

法定後見制度との大きな違いは、本人が後見人を選べるということです(ただし後見人は後見監督人(後程解説します)のチェックは受けることになります)。
本人の将来判断能力が不十分になった時に備えて利用する制度で、事前に公証役場で任意後見人の候補者と契約を結ぶことになります。
では順を追って見ていきましょう。

1 任意後見人の候補者選び

本人が任意後見人の候補者(家族、友人、専門家など)を選びます。もちろん契約を結ぶことになるので候補者の承諾も必要です。

2 公証役場での契約に必要な書類の収集

任意後見人の契約は公証役場で行う必要があります。そのため、まずは公証役場での任意後見人契約に必要な書類を集めていきます。

代理権の目録作成(原案)

代理権とは任意後見人に与える代理権のことです。つまり「何と何をお世話してもらうのか」を決めることになります。
これは候補者と相談して決めることになります。本やネットなどのサンプルを参考にすると良いでしょう。
また分からない事は公証役場へ問い合わせてみましょう。

原案とあるのは最終的には契約書は公証人が作成することになるからです。

任意後見契約書(原案)

こちらもサンプルをもとに作成しましょう。

財産目録

本人の財産目録を作成します。作成方法は上記の法定後見制度の欄を参照してください。

本人を証明するもの

戸籍謄本、住民票、印鑑登録証明書(いずれも発行後3か月以内のもの)、実印

任意後見人候補者を証明するもの

住民票、印鑑登録証明書(いずれも発行後3か月以内のもの)、実印

3 公証役場で契約

公証人を交えて本人と候補者の契約を結びます(実際には公証人との事前打ち合わせを何度か行うことになります)。
この契約を「委任契約及び任意後見契約」と言います。

費用が掛かります

公証役場の手数料(1契約11,000円証書枚数が4枚を超える場合、超える枚数1枚ごとに250円)
法務局収入印紙代(2,600円)
法務局登記嘱託料(1,400円)
書留郵便代(約540円)
正本謄本の作成手数料(1枚250円)

任意後見人候補者は任意後見人受任者(代理人)となります

4 法務局での登記

公証役場が「契約証書内容の法務局での登記」を嘱託で行います。つまり「将来に任意後見制度を利用する予定ですよ」ということを登記してもらうことになります。また、任意後見人受任者(後見人を引き受けた方)もその旨の登記がされます。

この段階ではまだ後見人としての効力はありません。従って後見人としての業務は発生いたしません。

4 家庭裁判所への申立て

任意後見受任者と決めた「後見開始の時点」に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てを行います。
(申立てる裁判所によって提出する書類が異なる場合があります。ここでは名古屋家庭裁判所を例にして解説していきます。)

申立書類(家庭裁判所から取り寄せます)

法定後見制度の申立て書類と重複する部分が多いので詳細は省略します。

@診断書、診断書付票、鑑定連絡票
A申立書、親族関係図
B本人に関する照会書
C任意後見受任者に関する照会書
D監督人候補者に関する照会書(契約で候補者を指名した場合)
添付書類
本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
本人の任意後見登記事項証明書
本人の登記されていない事の証明書
本人の任意後見契約公正証書の写し
候補者の住民票又は戸籍の附票(契約で候補者を指名した場合)
添付書類(本人の財産についての資料)
不動産

不動産登記事項証明書(法務局)、未登記の場合は固定資産税評価証明書(市町村役場税務署)を用意します。
売却を予定している場合は両方必要です。
(固定資産税評価証明書については、物件及び不動産評価額の記載のある固定資産税納税通知書のコピーでも可)

預貯金

預貯金の通帳・証書のコピー(過去1年分のコピー)

有価証券

有価証券等のコピーまたは証券会社発行の取引残高明細書のコピー(表裏全部)

保険

各種保険契約の保険証券のコピー(表裏全部)

負債

本人が債務者、連帯債務者、保証人、連帯保証人となっている負債について、その具体的な内容を示す資料のコピー(金銭消費貸借契約書、住宅ローン契約書、保証書、返済計画一覧表などのコピー)

添付書類(本人の収支についての資料)
収入

本人の収入を示す資料のコピー(年金・手当額通知書、確定申告書、給与明細書、配当金支払明細書等のコピー)

支出

本人に関する支出を示す資料のコピー(医療費や施設費の領収書(直近1か月分)、税金・社会保険の通知書(納付指示書)、請求書等のコピー)

費用
収入印紙

800円(申立書)、1400円(登記嘱託費用)

郵便切手

310円×1枚、82円×10枚、10円×10枚、500円×2組

5 任意後見監督人の選任

家庭裁判所で、審理・審判が行われます。

6 任意後見人の確定

「任意後見監督人」が選任されて、初めて「任意後見人」が確定されます。

ここから任意後見人としての業務が始まります

7 支援業務の開始

最初に任意後見監督人と今後の業務に関しての打ち合わせを行います。以後は任意後見監督人が報告、連絡、相談の窓口となります。
任意後見人は与えられた代理権(公証役場で契約した代理権)の範囲内で業務を行います。

任意後見人には同意権や取消権がありません。つまり本人が行った契約を取り消すことが出来ません。
取消権を行使するためには、改めて法定後見制度の利用の申立てを行わなければなりません。

8 任意後見業務の終了

本人の死亡により任意後見業務が終了します。この時、家庭裁判所に「後見等事務終了報告書」を提出することになります。

 

以上で後見制度についての解説は終了です。ここでは主に手続きに関して解説してきました。
実務などに関しては「後見人Q&A]「後見人のトラブル」を参考にしてください。

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