不動産はいりません!現金をください!
相続の現場からお届けいたします。
今回のトラブルは相続財産である不動産を押し付けあう姉弟についてです。
相続においては、その分け方が問題となります。
不動産を取得すると、預貯金や株を取得できなくなりトラブルとなることが少なくありません。
その不動産に同居していた場合などは、相続財産を分ける話し合いにおいては不動産を選択せざるを得ません。
なぜなら住むところが無くなってしまうからです。
配偶者に関しては法改正により居住権というものが認められることになり、優遇されることになりました。
しかし、それ以外の相続人同士ではトラブルの種となってしまいます。多くの場合は不動産を売却して相続人で分けるという方法をとることになるでしょう。
今回ご紹介する事例は不動産にまつわる相続のトラブルですが、少し特殊な事情があります。早速ご覧ください。
相続人は配偶者(妻 80代)、長女(50代)、長男の3人(50代)
相続人においてはごくごく一般的で珍しくもありません。
相続財産は不動産2000万円、その他預貯金・株券など2000万円とこちらも珍しいとは言えません。
ですが少し違った事情があります。
それは、長女と長男共に未婚で個人(被相続人)と同居していたことです。
一般的な家庭では結婚や仕事、独立などの理由で家を出ていくことが多いでしょう。
2世帯住宅などを建てたとしても、兄弟姉妹が高齢になるまで同居することは少ないでしょう。
今回はこのような背景から相続トラブルに発展していく過程を見ていきましょう。
同居を続けることでは全員同意しています
相続財産をどのように分けたとしても相続人3人はこれからも同居をしていくことで合意しています。
つまり誰が不動産の名義人となったとしても、これからも同じようにそこで3人で生活できるということです。
ピーンと来た方も見えるかもしれません。
つまり不動産の名義は自分以外にしてそこに住み続け、預貯金や株券など比較的現金化しやすい相続財産をそれぞれが主張してきたのです。
相続財産の分け方は相続人全員が納得すればそれでおしまいです。
ですが、今回の場合はなかなかまとまりません。法定相続分どうりに相続した場合妻の場合だと、「不動産2000万円」または「現金2000万円」となります。そして妻は「現金2000万円」を主張します。
長女・長男の場合は「現金1000万円」または「不動産を相続して1000万円持ち出し」となります。
法定相続分は必ず守らなければならないものではありません。先ほども述べたように相続人全員が納得すれば無視してもいいのです。
今回の場合でも解決方法はいくらでもあります。
実際に途中までは、妻が高齢ということもあり長女か長男が不動産を相続し、現金を法定相続分で分ける(妻1000万円、長女・長男500万円ずつ)という方向で話が進んでいました。
しかしその不動産をどちらが相続するかの話し合いがなかなかまとまりません。最初は押し付けあっていた不動産を今度は取り合うようになったのです。その度に話し合いは振出しに戻る、ということを繰り返していました。
そしてこの家族が導き出した結論は全く予想していないものでした。
不動産を売却して現金化!
なんと不動産を売却して現金化し、それぞれ別々に暮らすことを選んだのです。
夫の死をきっかけに妻は老人ホームに入ることを決意しました。
そして長女・長男はそれぞれアパートを借りて1人暮らしをすることになりました。
どういった話し合いが行われたかは想像することしかできませんが、それぞれが納得いく答えがこれだったのでしょう。
父(故人)が望んでいたことかは別として、悔いのない結果であることを望むしかありません。
不動産を手放せない事情があったり、手放すことに抵抗があったりする方も見えれば、今回のようにトラブルになるのであれば手放してしまえ。というのも有りかもしれません。
しかし今回の場合は。今後も3人で暮らしていくのが前提での相談でしたので驚きが大きかったです。
現場からは以上です。
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