相続手続きの流れ
相続手続きには順序を踏まえないと前に進めないことがあります。
例えば銀行預金の解約です。
預金の解約には様々な書類が要求されます。相続人であることを証明するための戸籍類や遺産分割協議書です。
遺産分割協議書とは、相続人が財産分与について合意したことを証する書類です。
遺産分割協議書には相続人全員の署名押印が求められますので、戸籍類によって相続人を確定させておかなければなりません。
相続放棄(後程詳しく説明いたします)などによって相続人が後順位に変更する場合もあるため相続人の確定は早めに行う必要があります。
また相続放棄をする場合も、相続財産を調査してから行う場合がほとんどですので、こちらも早めに行う必要があります。
どちらも調査に時間がかかるため効率よく行わなければなりません。
例えば被相続人の戸籍類は平均して5〜6通必要になります。遠方から郵送で取り寄せる場合は1週間以上計算に入れておいた方が良いでしょう。本籍を転々とされていた場合は戸籍の収集だけで1か月以上かかることも有ります。
このように相続手続きには時間がかかることが多く、そのため注意しなければならないことがあります。
それは「手続きに期限が設けられているものがある」ということです。
この期限を過ぎると手続きが認められなかったり、恩恵を受けることが出来なくなってしまいます。
期限にも注意しながら効率よく作業をすることが求められます。
まずはその流れを理解しましょう。
相続手続きの流れは以下の通りです。
相続の開始(被相続人の死亡)
遺言書の有無の確認
相続人の調査
相続財産の調査
相続人の意思決定
遺産分割協議(調停・審判)
遺産分割協議書の作成
相続財産の分割
相続税の申告
期限のあるもの
相続放棄・限定承認の申述(3か月)
準確定申告(4か月)、相続税の申告(10か月)
皆さんの想像する相続とは、「相続財産をどのように分けるか」がメインではないでしょうか?
上の表記で行くと6番目の「遺産分割協議」というのがそれに該当します。
もうお気づきと思いますが、遺産分割協議までにしなければならないことが沢山ありますよね。
このように相続では多くの手続きが求められます。そのためトラブルも多く発生してしまいます。
相続を知ることによって「効率的に手続きを進め」、将来のトラブル予見することによって「終活をして」そのトラブルの芽を摘んでおきましょう。
相続の開始
相続は、死亡によって開始する。(民法第882条)
相続は被相続人が亡くなった時から開始します。
相続財産は相続人全員の共有となり、原則として財産の処分は相続人全員の同意が必要となります。そのためこれから紹介する手続きが必要となるのです。
ちなみに相続手続きに期限がある「相続放棄」は、相続の開始を知ってから3か月以内となります。
遺言書を探しましょう
遺言書は相続において非常に大きな役割を持ちます。遺言書を書かれる方はまだまだ少数派ですが少しづつ増えている傾向にあります。
相続の開始を知ったら遺言書を探してみましょう。
ここでは公正証書遺言と自筆証書遺言についての手続きを説明します(秘密証書遺言はほとんど利用されていないため省略します)。
公正証書遺言の場合
公正証書で遺言書を作成された場合は遺族がその存在を知っていることが多いです。
そのため以後の手続きがスムーズに進むことでしょう。
まずは公証役場へ問い合わせをします(実際に遺言書を作成した公証役場でなくても構いません。検索してもらえるからです)。このとき相続人であることを証明する資料や身分証などを持参します。
公証役場に遺言書があれば謄本の写しを請求します(このときは実際に遺言書を作成した公証役場に請求します)。
自筆証書遺言の場合
自筆証書で遺言書を作成された場合は遺族がその存在を知らないことが多いです。
まずは故人の書斎や机の中を調べてみましょう。貸金庫があればその中までは確認しておきましょう。
この時には注意事項があります。自筆証書遺言を見つけた場合は開封してはいけないということです。もちろん破棄したり、隠したりしてもいけません。相続人になることが出来なくなるかもしれません。
遺言書を見つけた場合は、家庭裁判所での「検認の申立て」という手続きが必要となります。
遺言書と共に、相続人であることを証明する書類や申立書などを一緒に提出することになります。後日相続人の立会いのもとで開封され、検認調書というものがが作成されます。日付などの形式に不備がないかを確認して正式な遺言書と認めてもらうことになります。
検認とは、遺言書の存在と形式を確認するために調査する手続きです。遺言書の内容を保証するものではないので注意が必要です。
遺言書がある場合は遺言書の内容に従って相続手続きを行うことになります。
以下での手続きは遺言書が無い事を想定して解説しております。
相続人を確定させます
相続人の調査
相続人は誰になるのかを調査します。具体的には主に被相続人の戸籍を遡ることで行います。
まず被相続人の死亡時から出生時までの連続した戸籍謄本類を集めます
「戸籍謄本類」とは、除籍謄本、戸籍謄本、改製原戸籍謄本のことです。「連続した」とは空白の期間が無いということです。
戸籍謄本は様々な理由で作成され、また改製されます。例えば結婚や離婚をした時や、引っ越しをした時などに作られることがあります。さらに戸籍法の改正で改製されたりもします。
除籍謄本とは
除籍謄本とは、その戸籍謄本からすべての人が除籍された謄本のことです。除籍とは、結婚を機に他の戸籍を新たに作成したり、また死亡した場合に、その戸籍から抹消されることです。すべての人が除籍された場合はその戸籍謄本は除籍謄本となりそのまま保管されます。
改製原戸籍とは
改製原戸籍とは、戸籍法の法改正により改製された戸籍のことです。最近では電子化を目的として平成6年から改製されています。この時、一部記載内容が引き継がれない内容があります。離婚や養子縁組、子の認知などがそれにあたります。従って改製前の戸籍を調べないと判明しない事実もあるのです。
これらすべての戸籍を遡って集めることになります。
代襲相続が起きている場合は、先に亡くなっている方の戸籍謄本類も集めなければなりません。
戸籍をすべて収集したら法定相続人を確定していきます。
このとき相続関係説明図を作成します。誰が相続人かを分かりやすく図にしたものです。
これらの被相続人の戸籍謄本類、相続関係図、生存している相続人の戸籍謄本で相続人は誰なのかを証明することになります。
またこれらの書類は、後の遺産分割時に必要となります(預貯金の解約や相続登記の時に提出します)。
相続財産(遺産)の調査
相続財産の調査とは、被相続人の持っていた全ての財産を調査し、それらを全てを価額で表すことです。
価額で表す意味は相続税の計算に必要だからです。
では具体的な財産調査について説明していきましょう。
財産にはプラスの財産とマイナスの財産が有ります。
プラスの財産
プラスの財産とは、不動産、預貯金、現金、株券、会員権などです。他には貴金属、美術品、著作権、貸金債権など財産的価値があるものはすべて含まれます。
不動産に関しては国税庁の定めた評価方法を参考にして価額を割り出します。他の財産は預金残高、相続時の相場、市場での相場などをもとに価額を割り出していきます。
生命保険の死亡時受取金は相続税の計算時には必要となります。
マイナスの財産
マイナスの財産とはローン、借入金、クレジットカードや税金の未払金、保証人や連帯保証人や物上保証人(抵当権など)としての地位です。
すべて出揃ったら「財産目録」という一覧表にしておきます。
プラスの財産がいくらあるのか、マイナス財産がいくらあるのか、トータルで見るとどのくらいになるのかが分かるようにしておきます。
財産目録は相続放棄等の判断材料になりますし、遺産分割協議における資料にもなります。
相続人の意思決定
相続財産が出揃ったら、相続に対する意思決定を行いましょう。
相続発生時に相続放棄を検討されていた方は、このタイミングで行うことになるでしょう。
まずは意思決定の種類と方法をを見ていきましょう。意思決定には全部で3種類有ります。
単純承認
相続財産(プラス財産とマイナス財産)の全てを引き継ぐことです。単純承認の場合は後の手続きを進めていきましょう。
相続放棄
相続財産の全てを放棄することです。(相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申立てを行います。相続放棄を行うと相続人が次順位の方に変更される場合があります。)
限定承認
マイナス財産をプラスの財産の範囲内で相続することです。相続財産の清算手続きのようなもので利用される方はごくわずかです。(こちらも3か月以内の申立が必要です。また相続人全員で行う必要があります。)
相続人は上記の中から1つを選択しなくてはなりません。プラス財産だけ相続して借金のみは放棄するということが出来ません。
このタイミング相続放棄をされる方は3か月以内という期限に特に注意する必要があります。
相続財産をどのように分けるか決めます
相続人と相続財産が確定したら、次はその相続財産をどのように分けるかを決めなければなりません。
相続の中でも重要な作業となります。またトラブルが最も発生する場面です。
慎重に行いましょう。
遺言書がある場合
遺言書が有ればその内容に従って相続財産が分割されることになります。従って後に解説する話し合いなどは行わなくても構いません。(遺留分を侵害する場合はこの限りではありません)
遺言書が無い場合
相続人が相続財産の分割方法を話し合って決めます。この話し合いを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続人が相続財産の分割方法を話し合うことです。
相続人全員で話し合い、相続人全員が了承するまで続けられます。
話し合いがまとまった所で決定事項を書面に残し、相続人全員の署名と押印(実印)します。この書面を「遺産分割協議書」といい、後の解約手続き等で必要となります。
遺産分割協議がまとまらない場合は、次項の「家庭裁判所による調停・審判」を仰ぐことになります。
家庭裁判所での調停・審判
家庭裁判所に「調停の申立て」を行います。
家庭裁判所での調停とは、調停員と呼ばれる方と当事者を交えて話し合いを行うことです。
第三者に加わってもらうことで解決することもあります。
調停でもまとまらない場合は家庭裁判所での審判を仰ぐことになります。お互いの言い分を主張して裁判官に決めてもらいます。
相続財産の分割方法を決めないと次のステップに進むことが出来ません。相続対策のポイントでもあります。
相続財産の分割
ここまでの資料の収集・作成は実際の相続財産の分割の下準備にあたります。これらの資料をもとに預貯金等の解約や不動産登記の名義変更を行っていくことになります。
ここでは預貯金の解約(または名義変更)の手続きについて説明いたします。
各金融機関先の所定の用紙
被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本(出生時から死亡時)
相続人全員分の戸籍謄本、印鑑証明書
遺産分割協議書
銀行への相続手続き依頼の申請書
以上の書類をそろえて提出し、相続による口座の解約手続きを申請します。2週間程度で手続きが終了します。
預貯金の解約の他にも、株券の解約、不動産登記の名義変更なども必要になります。
基本的には今まで収集・作成した資料と個別の申請書を提出することになります。
相続税の申告
相続税が発生しない場合は申告は不要です。申告の期限は相続開始の時から10か月以内です。
また故人が個人事業主などであれば「準確定申告」が必要です。こちらの期限は4か月です。
いずれも税務署への申告となります。
相続税にはたくさんの控除制度があります。相続税の基礎控除額を超えていた場合でも、これらの控除制度を利用すれば相続税が発生しないまたは相続税を抑えることが出来ます。
ただし注意が必要です。基礎控除額以外の控除制度を利用する場合は、控除制度利用によって相続税が発生しない場合でも税務署への届出が必要ということです。
10か月以内という期限を過ぎると控除制度自体も受けることが出来なくなってしまいます。
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相続においては、大きな金額の財産が動くことになるため慎重な対応が求められます。
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